傷病手当金(しょうびょうてあてきん)という言葉を聞いた事ありますでしょうか?

健康保険に付加されている制度の一つなのですが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、国民健康保険でも(一部)利用できるになりました。

医療保険やがん保険などの生命保険に加入する際には、こうした公的保険の内容をチェックしておくと、無駄のない加入ができますので、今回はこの傷病手当金について解説致します。

傷病手当金とは?

傷病手当金とは、健康保険に加入している被保険者が、病気やケガのために働けなくなり、会社を3日間連続で休んだ場合、4日目から休んだ日に対して月給の概ね3分の2が支給される制度です。最長で1年6カ月後まで受け取ることができます。

国民健康保険にはなかった制度

傷病手当金のこれまでの対象は、協会けんぽ・健康保険組合・共済組合・船員保険に加入する勤め人に限られていました。

国民健康保険(国保)に関しては、保険者(保険制度の運営者)による任意給付となっており、これまで支給実績がなく、実質的に国民健康保険には傷病手当金制度がない、という状況でしたが、新型コロナウイルス対策の一環として、国保加入の勤め人が特例的に傷病手当金の給付対象となりました。

コロナ対策として制度改正

この制度改正は、国内で感染拡大し始めた3/10の緊急対応策第2弾に盛り込まれました。

新型コロナウイルスに感染したり、感染が疑われたりした国保の勤め人に対して、健保などと同じように傷病手当金が支払われる、という内容です。

全ての国保加入者が対象ではない

この制度改正は、国保の加入者全員が対象者となっているわけではありません。

まず大前提として、コロナ感染者に支給するかどうかは自治体など国保の運営者の判断となります。ですから、自治体によっては導入しない可能性もありますので、お住まいの地域で確認をしていただく必要があります。

また、同じ国保加入者でも自営業者や退職者は対象外となっていて、あくまで「勤め人」に限定されています。被用者(勤め人)は、国保加入者全体の約15%程度ですので、決して対象者が多いわけでもありません。

傷病手当金制度の内容を確認

今回の制度改正は、国保加入者に関してでしたが、そもそも傷病手当金は健康保険の制度です。
まずは、この傷病手当金制度についての内容を知っておきましょう。

医療保険やがん保険といった生命保険に加入する際には、ご自身の加入費ている健保の傷病手当金制度を知っておくことで過剰な加入を避けることができます。

傷病手当金の受給額は?

傷病手当金は「標準報酬月額」という健康保険や年金保険の保険料を計算する時の算定額を元に決めますが、傷病手当金額もこの「標準報酬月額」を元に計算されます。

平均月収の2/3を受け取れる

標準報酬月額 ÷ 30日 × 2/3 = 傷病手当金額(1日あたり)

標準報酬月額は、概ね「賞与も含めた平均月収」で計算すると大きな差異はないと思います。

例えば、賞与も含めた年収が600万円の人だったら、
500,000円(平均月収) ÷ 30日 × 2/3 = 11,110円(1日あたり)
となります。

傷病手当金が受け取れる条件

傷病手当金は、ケガや病気で休むだけで受け取れるわけではありません。いくつか条件がありますので、確認しておきましょう。

業務外のケガ・病気である事

仕事中や通勤中の場合のケガや病気は「労災保険」の対象となります。傷病手当金は、業務外でのケガ・病気が要件です。

仕事ができずに休んでいる事

仕事を休んでいるだけではダメで、仕事ができない状況である事も要件です。今はリモートワークなども広がっていますので、それらで対応できる場合は、傷病手当金ではなく、通常のお給料を受け取るということになります。

給与の支払いがない事

傷病手当金は、働くことができず、お給料をもらっていない場合に支給されるものですので、休んでいても給与の支払いがあれば対象外となります。(有給取得中は対象外ということになりますね)

傷病手当金の支給期間

傷病手当金は、会社を休んでから4日目以降が支給対象となります。
最長で1年6ヶ月までとなります。1年6ヶ月間ではなく、支給開始から1年6ヶ月後まで、となりますので、ご注意ください。

生命保険に加入の前に制度を確認

傷病手当金は、給与のおよそ2/3程度の金額が受け取れます。しかし、支出を通常の2/3まで減らせるとは限りません。教育や住宅費など生活に欠かせない費用は、急には下げられないものです。

ライフステージや状況によっては、傷病手当金だけでは賄えないケースもあり得ます。

預貯金で対応が可能かどうかなど、ライフプランも一緒に確認いただき、無駄なく、適正な額の生命保険に加入して、リスクに対応できるようにしておくことをお勧めします。